。だがその一方で依然として「内容が一つ一つ逃げてゆく話」などという前の投書の言葉を、どうして素直にうけいれないのかと、河上氏は詰問している。だが、だれが考えたにしろ、私が話の内容まで明らかにして多数の反響と一致する一つの事実についても述べていることにはあえてふれず、自分の仕事の完成していないのがわかっているなら、いわれたままをうけいれろ、とつめよるのはいいがかりじみているし非常識である。
もしめったにとりつけない内容であったり、一つ一つ逃げる内容だったりしたら、ひろく人の心に生きるどころか、文学作品として実在するにたえないものである。このような基本点での独断を強引に押しつけようとする非難に屈さないのは、むしろ当然ではあるまいか。誠意ある批評とか完成のための忠言とかいうものは、こういう本質のずれた議論の上になりたつものではない。
革命的小市民というのは、社会の現状に一応の批判をもって、ある程度の変革に参加するけれども、労働者階級の勝利と社会主義、共産主義への見とおしに生きるには到っていない人々を意味する。私はそういう種類の作家ではない。進行中の長篇は起伏を通じて労働者階級の歴史的使命
前へ
次へ
全4ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング