の上に安々としている或るユーモアの境地があり、作品に独特なおもむきを与えているではありませんか。
ところで、この『集団行進』をよんでも思うことは、時事問題を芸術として扱うことの必要と同時についておこるその難しさです。ソヴェトの建設について「思想も統制」されることについて、私たちの日常生活は切れない影響をうけているのだから、それらは芸術化されなければならず、更にこういう主題こそ一層の形象化、具体性を必要とすると思われます。詩人の間に諷刺詩の制作の要求がおこっていることは、今日私たちが取りくんでいる社会情勢との関係で謂わば自然な人間的要求の一発露でしょう。詩のジャンルとして諷刺詩というものがあり得るとか、あり得ないとかいう論議より先に、私共は実際生活の場面で屡々《しばしば》それに対して憤りの感情を激発され、しかもそれなりの言葉では云い現わせないという窮屈な事情に出くわしつづけているのです。一九三六年版の年刊には、果してどのように成長した時事的作品が短歌の境域に出現するか、見落せない期待のひとつです。
山田あき、田中律子という二人の婦人の作品はそれぞれ注意をひき「織布部《おりぶ》のうた」
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