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よろめけば
よろめく方から打って来る拳に
歯をくいしばって体勢を整える。
    ×
なぐらせるという反抗の仕方だけ残され
憎しみのかたまりとなって
うんとなぐらせる。
    ×
手ばなしでなぐられる
金しばりの中で
頑固に自らを試煉する。(以上、烏三平)
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 これらの作品は、非常に複雑で熱い意欲をたくみに圧縮しつつ心を打つ力をもっていると思われますし、別な例では、

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ようやく終った所長の訓示
ヒヤカシ半分に拍手浴びせ
ワッと喊声あげて職場へ引き上げる。(水原蓮)
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など、この前にある二首とともに、そこに集る労働者たちの若さ、肉体の動き、足音、身なり、声々まで想像され、よく生活的に描写されていると感じました。情景のまざまざととらえられ感情化されている作品として、「橋梁架設工事」「生活の脈動」「町工場」「シベッチャの山峡」「下水工事場」「三河島町風景」「無題」などの中に、いくつか印象のつよい作がありました。山田清三郎が獄中からよこす歌には(独房集)何とも云えぬ素直さ、鍛えられた土台
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