家庭と学生
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)暢気《のんき》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四一年五月〕
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今日家庭というものを考える私たちの心持は、おのずから多面複雑だと思う。
家庭は今日大事とされている。貯蓄のことも、生めよ、殖せよということも、モラル粛正も、専ら家庭内の実行にかけられている。
昨夜の夕刊には、大蔵省の初の月給振替払いの日のことがのっていた。月給百五十円以上の人々は、現金としては半額しか入っていない月給袋をうけとった。すぐ振替えをとることが出来るのだそうだけれど、私たちは閃くような思いで、うちはどうするのだろう、と考える。先日の新聞には、月給百五十円の人の家計は昨今五十円ずつ足を出して、それは赤字となっていることが報告されていた。私たちはみんな自分の実際でそのことは知っている。だから、それさえも半額ときくと、無関心でないのだと思う。
段々民間にもその方法を試みると語られていて、その方法がひろく行われれば行われるほど家庭はどうやってゆくのだろうという思いがひろがる
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