の保護を受けたそうに見えた。
 低い、然し熱心な調子で、いろいろ云う言葉を耳にききながら、彼女は、瞼を下して、枕の上にある友の顔を見た。なるほど、重る不幸のあった後、お恵さんはめっきり年を取って見えた。飾りけのない束髪にあげた耳の後や、眼尻には、歴々と疲れた衰えが見える。然し……年を考え、自分の健康を思うと、お幾には、それほど、お恵さんがしんから弱っているとは信じられなかった。
 たった、四十四や五で、歩いても息が切れるほど老衰するものだろうか?
 お幾は、年頃の時代から、頭の痛いことさえ知らなかった。肥満し、動作が億劫にこそなれ、彼女は、今でも三十代と違わない活力を裡に蔵しているのである。
 彼女には、お恵さんの弱りも、失望し、落胆した心から出るとほか思えなかった。
「病は気から」ということさえもある。――
 それにしても、お幾の心の中では、次第に、こんなことでお恵さんが勇気を挫き、信仰の方も疎《おろそか》にしはしまいかという一事が不安になり始めた。
 なかなか熱心な人を紹介されたと云って、自分も喜ばれている。一方から考えれば、それだけ、自分の信心力の強さも証明されたことになった。お
前へ 次へ
全33ページ中21ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング