て独自の断面から、日本の人民の生きかたについてを思わせます。「鉛筆詩抄」にあるどの詩も、その詩としておのずからな生活上のモティーヴにおいて生れていることにつよくうたれます。わたしは文学において、その点での自然性を高く評価するたちです。そのモティーヴの必然性がより高く、よりつよく、より美しくあるためにこそ、わたしたちの人生は「風」をいとわず「猫背」をきらい、「なんじゃもんじゃ」にからめとられまいとするのです。
「鉛筆詩抄」の拝見できたことを感謝いたします。「鉛筆の詩」こそ、わたしたちのたたかいのうた、光栄のうただと思います。ほんとにわたしたちは、「われつねに一本の鉛筆を懐中す」その鉛筆のしんは決して折られてはいないのだ、と思って、一本の鉛筆さえとりあげられるような生活を生き貫いて来たのですから。これからの幾波瀾のなかで、あなたの鉛筆、そしてわたしたちすべてのものの鉛筆が、真に懐中するに足りるものであるためには、どれだけかの勉学と堅持とがいることでしょう。詩人よ、すぐれた天質を高めよ。詩が理性のうたであるときいて、しりごみした旧い詩人たちの素朴さ。わたしたちの理論が情熱の美感と一致するとき
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