、興にのって、あっちへ行っては下駄で枯葉をかき集めて来、こっちへ来てはかきよせ、一所に集めて落葉塚を拵えた。一太の家の方と違い、この辺は静かで一太が鳴らす落葉の音が木の幹の間をどこまでも聞えて行った。一太は少し気味悪い。一太は竹の三股を担いで栗の木の下へ行った。なるほど栗がなっている。一太は一番低そうな枝を目がけ力一杯ガタガタ三股でかき廻した。弾んで、イガごと落ちて来た。ころころ一尺ばかりの傾斜を隣の庭へ転げ込みそうになる。一太は周章《あわ》てて下駄で踏みつけた。一つの方からは大抵色づいた栗が二つ出た。もう一つのイガの青い方からは、白っぽい、茶色とぼかしに成った奴が出て来た。一太は手にのせて散々眺めたままいそいで懐に入れた。一太は再び三股で枝を叩いた。ヤーイ、バンザーイ! ばらばら、丸々熟した栗が今度は裸で頭の上から落ちかかって来る。一太は我を忘れ、首がかったるくなる迄上を向いて実を落した。
一太が再び部屋に戻ると、一太の母はやはり元の椅子に、ふてたような顔付をしてかけていた。一人であった。
「――おじさんは?」
「あちら」
「これ御覧、おっかさん、こんなにあったよ」
そこへ男の人
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