まぜ、赤絵壺にさして飾る。
床壁、緑っぽき黒の砂壁、その前に花の色、実に落付いて美しき調和。
絵――油、にかきたい心持がした。
恐ろしい風の吹く深夜
月皎々
黒龍のような雲
白い花
硫黄山
五月 那須
○いし子
○きみ子 色気あり
Y「さあこれから行って寝よう」
キ「眠らせませんよ」
きみ子 びわ師がいい人、
○みどり
米問屋の女房、その手下の男との話
「さよう、さよう」
「いくら私共が御迷惑をかけまいと思って居たって、親銀行が困って居るんですから」
「全くですな」
「地震の年ですかな、その次の年でしたかな、鈴木商店が潰れて随分苦しみましたぜ」
「いや、やっぱり車輛課長」
「随分然し家へなんか居催促でしたよ、執達吏が来るかと思って心配しましたよ」
夢
六月九日
原稿のつぎばりをしようとして小さい鋏をつかう拍子に
「おや、これは先がつぶれて居ない」
奇妙に思い、この鋏の先がつぶれたのは夢の中のことだったと思い出した。つづいて昨夜のもう一つの夢思い出した。それは柔かい緑色の若葉の梢の中からいくつも、いくつも
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