様がないじゃありませんか
 じゃ、この幅をひだによせて右左に一本ずつたたみましょう、そうすると、真中に合わせめの線があって[#ワンピースの胴によせるひだの図(fig4206_08.png)入る]なるから少しは形がつくでしょう」と手真似して話した。

     夢 四

 天皇、ステーションに停って居る汽車の中から何か宣う
 体をゆすりつつ 今大きな声 急に小さい声 又大きい声 変に不安だ。群集笑う 「何故笑うのか」と怒り給う。
[#ここから1字下げ]
〔欄外に〕
 新聞に天皇が多摩陵へ御出かけのときの車窓に立った憂鬱な写真を見た
[#ここで字下げ終わり]
 すると今度は自分が立って喋って居る。
「私は眠れません、世界に思想がありすぎるのです、
 まだ字を知らなかった時から人間はこんな形で(と手の指で楔形文字の形をこしらえて見せ)思想を表して来た。
 それから何万年かの思想がたまって来て居るのですもの、どうして眠れましょう ああ、思想が多すぎるのです」片手で胸を押え悲痛な感情で叫んだ。
 目がさめてもその心臓がちぢんだような悲しい感じのこって居た。元ずっと前 国男が首を吊ってフロの中に下
前へ 次へ
全25ページ中21ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング