ってるわ」

     田舎新聞

 ○「寒天益々低落
 おい大変だぜ 寒天下落だよ

  中央蚕糸
  紅怨《うらみ》  紫恨《つらみ》

 ◇二度の左褄
 上諏訪二業 歌舞伎家ではさきに 宗之助 初代福助の菊五郎の二人が古巣恋しくて舞戻ったが、今度は又初代勘彌が云々

     茅野

 山の裾から盆地に雪が一面、そこに藁塚が関東のとは違い[#丸底フラスコのような藁塚の絵(fig4206_01.png)入る]大きな泡盛のびんのような形で黒く沢山ある。遠くから見下すと、まるで凍った白い雪の上を沢山のペングィン鳥が群れ遊んで居るような心持がした。
 ○凍って歯にしむみかん[#「みかん」に傍点]
 ○若い芸者、金たけ長をかけ、島田、
 牡丹色の半衿、縞の揃いの着物
 ○寒い国の女、黒い瞼 白粉の下から浮ぐ赤い頬
 ○水色、白 黒の縞になったショール
 ○赤い模様のつまかわ
 ○太鼓をたたく
 ○木のひねくれた板に 一力と白で書いたような曖昧や
 ○表レン子格子
 ○二階トタンを張った雨戸
 ○月に二度女工の休み。
  二十七日から八日にかけて。
 ○小さいのから二十前後の白粉をぬりべにをつけたのまで。

     べこべこ三味線

 お座つき香に迷う(端唄)がすんだら 都々逸
 下諏訪らしい広告
   御待合開業
  今回各位の御同情により二月十八日より
  御待合並にうどん店
 開業致し親切丁寧を旨として大勉強仕候間御引立の程願上候、
  うどん/きそば[#「うどん」と「きそば」は2列に並ぶ]御待合[#地から3字上げ]入仙
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〔欄外に〕君が……かりねの床
[#ここで字下げ終わり]

  ○下スワ、上スワ、チノ間の乗合自動車
  赤、緑の車体
  女車掌
   茶の外套、赤いルビーまがいの指環、出入口の段に片脚ずつかけてサッソーとのってゆく。

     往来所見

  ○毛糸の頭巾をかぶった男の子二人、活動の真似をして棒ちぎれを振廻す
  ○オートバイ
  「このハンドルの渋いの気に入らん」
  とめたまま爆発の工合を見て居る。

     女の言葉の特長

 ねーえ と引っぱって[#四分音符ミファレに「ネーヱ」の歌詞の楽譜(fig4206_02.png)入る。]というが如し

 だに
 おいでた
 だかね
 居ますんね
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