に居た男、大正九年の暴落でつぶれ、竹内のところでごろつき、会に入れて貰う。赤坂の芸者にひっかかった尻ぬぐいその他すっかりさせた男、段々隣保館で勢力を得て、今しきりに反竹内熱をたきつけて乗とろうとして居る。その男が、まあそれはよくないと宍戸をやめること中止さす。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して3字下げ]
○宍戸に竹内どてらなどくれる。
○横田 中央出、両方にはさまりどうしたら利口に立ち廻れるかと考えている男。
○小野
○唐沢 老人、眠って居るいつも竹内の弱点をにぎる
○三輪
○竹中 竹内にすっかり恩になったのに反竹内熱を煽ろうとして居る。
[#ここから3字下げ]
もやをやめさせろという そして当人を見ると、何故やめるか いやなことがあるか何とかなろうなどと云う。電話で「バカヤロー」と怒鳴るというウソ、人にそんなことを云うだけ 横田をやめさせろと云いつつ横田には内密で、成人教育をやらせる。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから1字下げ]
〔欄外に〕
いたちごっこ
竹中は竹内を精神欠カンがあると云い、竹中をモヤは道徳的欠カンがあると云い、そのもやを、竹内は低能児と云う。
お澄、の言葉によってそれが知れる。
[#ここで字下げ終わり]
五月二十二日
Mutter のことをいろいろ思い、この頃一つ違った観察をした。
老年になろうとする前に、まだ若さがのこって居て、その不調和と、生活に対する執着から苦痛が生じ気分もむらになる。若い女に対して嫉妬深い。普通の女、五十になれば老衰し切るがまだ若いところが多いだけ苦しいのだ。その若さがもがく、然し目的ない――生活の――。故に苦し。若くない、老人でない、その苦痛、同情すべし。
六月或日
Y机の前で旅券下附願につける保証書の印を加茂へもらいに送るその用の手紙書きつつ
「ねえべこちゃん、これ切手はらないでいいんだろうか――印紙を」
「ハハハハもやでもそういう感違いするのね ハハハハ愉快愉快」
「いらないのか?」
「いらないのよ 収入[#「収入」に傍点]印紙ていう位だもの」
――これで一つ思いついた
持参金をうんと貰った男に
「君の婚姻届には収入印紙がいるね」
花袋《はなぶくろ》
まあ、一寸小説もよむ
田山|花袋《はなぶくろ》の口やね
前へ
次へ
全13ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング