ヘない筈と、次に鯉口をくつろげてゆく。又駄目。
 四度目に自白して、ニコライの唯一の助手となり生涯を倶し、ニコライはどの位――さんにたよって居たかしれぬ。二人で日本最初の伝道を始めた。
 ○ニコライの翻訳を手伝う人に、京都の中西ズク麿さんという男あり。大した学者。不具。手足ちんちくりんで頭ばっかり大きい。歩くに斯うやってアヒルのように歩く。その人がニコライの助手で「さあズクマロさん仕事をしましょう」と笑い乍らニコライ、ちょいと傍の椅子にかけさせてやる、そして自分側に坐り、ユダヤ、グリーク、ロシア聖書参考して聖書翻訳にとっかかり熱心に働く。
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〔欄外に〕
 ニコライ大きい実に堂々たる人、ズク麿さんニコライの腰きりない。それがいつも仕事は一緒で、はなれず。
[#ニコライとズク麿の絵(fig4204_01.png)入る]
 こんな形、しかし美しい心の結び方!
[#ここで字下げ終わり]
 ○ニコライのいうことは皆心服した。
 ○いよいよ体がわるくなったとき聖ルカに入院。私死ぬか活きるか教えてくれ、死ぬ。では何日もつであろう。はっきりは分らぬが十日。ではこうしては居られぬ、
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