≠氏@live no longer without a mate.”

             ○
「檀那様、表で赤ちゃん抱いてこっちのすること見て居るの、まあ、おかしーいったら」
 細い妙に抑揚のある話しぷり。
「いたいでしょう、おじいさん、どうなすったんです」
「たくさん買っていらしったのね、おじいさん、五十銭?」
 沢山しゃべり、おじいさんおじいさんという。がその女の声には何だか愛がとぼしくうるおいがとぼしく、半分子供あつかいにしておじいさんというようなところあり。親身の孫ではないらしい。孫の嫁、そういう気あり。

     駿河台のニコライ大主教

 ○日本に五十五年も居て明治45年に死んだ。来たのはハコダテの領事館づき。その頃はこだては榎本武揚の事があった故か仙台の浪人が多く居た。一人、四国の漢学者の浪人アリ。攘夷論の熾なとき故一つ殺してやろう、その前に何というかきいてやれと会った。ニコライ、まだ来たて故日本語下手だが話して居るうちに迚も斬れず。空しくかえる。
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〔欄外に〕○丁度一八六〇年頃フナロードの始った頃。
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 こんなこと
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