\日あれば相当の仕事が出来る。
 早速かえって、祈祷書の翻訳にとりかかった。又ズク麿さんをとなりにかけさせ、自分訳す、ズク麿さん歎文的日本語になおす。
 十日働き、その翻訳もすみ、独り部屋でロシアへ報告書を書いた。終ってペンをおき傍のディ※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ァンに横った。それきり。看護婦心配してやがて来たときにはもう死んで居た。平和に、立派に、壁の方に顔を向けて――聖画があった?
 それは美しい午後か?
 ズク麿さんとニコライの友情に美を感じ、その死をも美しいと思う。

     天保さんの結婚

 神学校、司教の息子、いつまで経っても卒業せず。シベリアへ通弁。青森の大金持の男、信者、娘一人、後とりの後見もして欲しいから学問があって、人物の出来た人、
 そこで、結婚ブローカーがあって、
「それじゃいい人がありますっていうんですね、司教の息子それじゃ立派なもんだろうって云うんで先は承諾。親父は職業がなくって困って居るんだから一つ何でもというわけ。当人はすきな人もあってのり気せず。ことわるにも一遍まあ御覧なさいとブローカーが云うので行く。
 後へ引けないことになって結婚、
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