結婚して損はないんだがなあ」
 生田 自分
「めぐり合わせで来るときは来る。間違ったことをするより待った方がよい」
 綾子 それは分って居る。が、寂しい。弟が幼いのに、待[#「待」に「ママ」の注記]るのがまち遠しく、いきなり「―ちゃん」と云って泣いちまうことがある。子供の当惑。社会状態。==生活難、結婚難、等等。
 淋しさの鋭い刀できられる心。

     中年での疲労

 若くて田舎から出、金になる原稿、名をなす為の原稿と三日四日徹夜しても平気で仕事をした女、二十七八になり、やっとこれからが楽しみというときにつかれが出、頭や手がしびれ仕事どころでない。「それは辛いわ、とても悲しいわね」「だから、余り無理をする人を見ると、私おやめなさいって云うの」

     小田切益之助の娘

 二十三、聖心女学院出、
 頭のよい、派手ずき。
 お茶のテーブルに花をまき、クリームを銀器で出すという風。
 長尾半兵衛の息、ケイオーに七八年居、いつ卒業するかあてのない男と婚約。――自分が引まわせる気のよい男という条件で。長尾の地所が二十万円でうれたら結婚する。それまで娘早稲田に聴講生として通う。

  
前へ 次へ
全35ページ中16ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング