le role. Everybody knew her, and nobody paid her any attention.
 She was very self−conscious, and she looked about her with impatience for a deliverer to come to her rescue.

     或夢(父上の見た)

 崖の上を歩いて居た。下は海だ。ふと見ると、牛が二匹泳いで来る。一匹は真直に来るが、もう一匹の方はつかれたと見えて、三角州のようになって居る彼方にそれてゆく。こんどは人間が流れて来た、三人で皆長髪だ。ああいやだなと人を呼びにゆくところで、目がさめた。
 その三人が長髪であったので、さめたあとまでいやな心持がして仕様がないから、電報を打とうかと思ったよ、そしてこんな馬鹿な想像をしたのさ、スエ子が居るから、若し海岸でも散歩しようときかないで出て、何かあやまちでもあったかと思ってね。
母「だってすえ子はもう土曜にかえしてあったじゃあありませんか」
「ハハハハ本当にそうだったな」
私「一寸お忘れになったのね、そのとき」
「ふーうむ」
 これは母コウヅに女中ととまり かえって、その日帝劇で父と会ったとき、父上の話されたこと。

     夢

 デンマークだ。氷原の上を、タンクのようなものや何かが通る、停車場のようなところに自分、多勢の白衣の少女と居る。自分、英語で、劬りながら話した。
 How old are you?
など。少女一寸英語で返事するがうまく云えず困って居る。

     隣の職工の会話

「おはぎとぼたもちと違うんですか?」
「違いますよ、ただところによって名が違うと云うけれどそうじゃあありませんよ、ぼたもちは半殺しさ」
「へえ? 半殺しって?」
「もち米を飯にたいて、それを、あたり棒か何かでつぶすのさ」
「臼でぶったたくんだね」
「あらいやだ臼だって。杵でしょう?」
「――杵でさ」
「おはぎはじゃあどういうんです」
「おはぎは、飯のまま握ってきなこやなんかでまぶしたのをおはぎというんさ」
「そうかね、やっぱりもち米でしょう?」
「みな殺しってえのは」
「餅さね」
「ハハハハ」

女の声
「ねえーさん、労働組合ってあるんだってね、それに入ると、毎月二十銭ずつだか会費をおさめるんですっ
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