と日本の勤労大衆が現在経験しつつある政治的経験の深刻な階級的意味を啓蒙し、専制と恐慌、帝国主義戦争の重圧からの抜道はプロレタリアにとって何処にあるかということを明らかにして来ている。弾圧は決して無力な階級的組織に向って下されるものではないのである。
炬燵の上に新聞をひろげて更に眺め、わたしはこの暴圧がどの位の範囲まで拡大するものか、或は終熄するものか見当がつかなかった。○○君は単純にまた例の意地わるが始ったというぐらいに理解している。
「やりますねえ」
と云って、炬燵の向い側から同じ新聞をのぞいている。けれども、記事はわたしの心持に何かもっと重い余韻をのこした。身重《みおも》な窪川いね子が小さいふくさ包をもって上落合の作家同盟の事務所の横にポンプ井戸がある、そのわきを歩いていた姿を思い浮べた。
七時頃、若々しい中形模様の着物を着たサークル員の女工さんがやって来るまで、わたしはなお一二度、新聞をとりあげて見なおした。
二人・五人・七人。男女サークル員がだんだんやって来てその炬燵のある和洋折衷の室はやがて一杯につまった。この前の講演会の結果から始って、女工さんたちの方が男のひとたちよ
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