り元気にしゃべった。頬を上気させ、しかし手は行儀よく炬燵布団の下に入れたまま。
「そんなこと――嘘ずら!」
「誰が出すもんか。――誰が云ったの?」
「坂田が来たんだって」
「ふーん」
女工さんたちが幹事をしている女子青年団ががっちりしているので、町会は、下諏訪町にあるもぐりの小新聞の主筆をつかって、組織がえをすれば年に百五十円とか補助金を出すと持ち込んで来ているのだそうだった。
「わたし達が役員に当選したら、先の女子青年団長が泣いてやめてしまったんです。」
「何故泣いたんです?」
「え? 工場へなんぞ出る人と一緒にされてはたまらないんだって」
女工さんはみんな眼を輝やかせ、凝《じ》っと胸を張って坐り、仲間の一人が何か云うとそれを注意ぶかく聴き、彼女らの云いたい言葉が云われた時にはつよく賛意を示し、愉快そうにこだわりなく笑う。自信のあるみんなの物ごしが自分に感銘を与えた。ソヴェト同盟にいた頃、よく工場で婦人労働者たちの間に交り、喋った。そこの若い婦人労働者たちが示したと同じ性質の注意力、知識慾、階級闘争の実践への吸収力を下諏訪の文学サークルの女工さん達から感じたのであった。彼女らの実
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