質的な明るさは注目に価した。
「働く婦人」はこのサークルでも好評で、重宝ノートなども実際の役に立てられていることが分った。例えば自分の袖口にリボンをつけて切れるのをふせぐという狭い範囲での利用ばかりでなく、一人の女工さんがそんな細工をしていると、ふらりと来かかった他の一人が「何してるの」というようなことになり、「それはこの雑誌に出ているのよ」と「働く婦人」が見せられる。そんな工合に利用されるのであった。サークルからニュースを出すことがそこで決定され、「働く婦人」への通信員も婦人から二人きめられた。
今日は、下諏訪から満州へ出征させられて戦死した兵士の遺骨が到着したので、青年団の連中は停車場前の奉迎に強制動員されたのだそうだ。
「ここへ来る前塩尻が本籍地だって云うのでもう一度そっちで奉迎やって来たずら。骨をわけて持って来て、またこっちで奉迎だ。雪っぷりに傘もささせぬ。新規の羽織台なしずら」
ばかばかしそうな口ぶりで農民の△君が話した。
「どうだ? 女子の方も行ったかね?」
「行くもんで! 話して来ないもん」
それから、みんな砂糖豆をたべながら、サークル員がこしらえた「職場の歌」をう
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