会の後、主催者であった青年団と町役場との間に問題が起った。作家同盟の誰だったかの話が、帝国主義侵略戦争反対にふれて中止をくい、一時講演者が検束された。それを口実に、町会の反動分子が自主的青年団に抗議を申込み、以来ああいう不埒《ふらち》な講演会をすることはならん、役員は引責辞職しろ、さもなければ年二百円の補助費を廃止する、とねじ込まれ、男子青年団の方は、まけて辞職し、反動にヘゲモニーをとられてしまった。ところが、共同主催者であった女子青年団の方では、悪い講演会であったとは思わぬという役員の決議で、辞職を承認せず、今もがんばっているという○○君の話であった。女子青年団の方では役員の八分が工場の女工さんで、ほとんどサークル員でしめられているというのは興味あることだった。
 ○○君は自身評議会時代から階級的闘士として立つ以前、製糸工場で「見番《けんばん》」をやっていた経験がある。私に製糸工場の組織を図解して説明してくれた。長野県だけでもおよそ九万人の婦人労働者がいる。もちろん繊維が主なのだが、製糸工場の組織をみて、わたしは、それがどんなに女工を搾取するためにだけ恥なく仕組まれているかということ
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