るニイチェ風に押しきり得るものか、あるいはその折れ目からかえって全くインテリゲンチア的に虚無的な低下へまで堕ちこむか、私たちは、石坂洋次郎がすでに一つの重大な内容をはらんだ前進をよぎなくされていることを感じるのである。
本年度に入って「ナルプ」が外的・内的の圧力によって解散したこと、ならびにかつて文学の全野の上に鮮やかな階級性の問題を押し出して来ていたプロレタリア文学運動の指導者たちのある部分が、敗北して、現在では自分たちの階級作家としての実践で歴史の推進を実証することはできぬものとなって再び一般文学の中へ還って来ている事実。この二つは、プロレタリア文学を建設しようとしている作家たちを混乱させたと同時に、一般のインテリゲンチアに、自身の消極性を正面から肯定させるような結果に導いている。
横光利一の「紋章」が、現在ブルジョア文学の上では非常な注目をひいているのであるが、その騒がれている心理的な背景は、この問題ときりはなして理解し得ないものであろうと考えられるのである。
数年前、プロレタリアートの擡頭とともに文学における階級性の問題が提出された頃、インテリゲンチアの苦悩と不安とは今
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