の他多くの作家たちは、石坂の作品にある誇張癖、古めかしさなどを、一概に咎めだてすることはできぬといって、作品にこもっている作者の生活感の豊かさを評価している。もっともではあると思うが、私どもは、この作家の作品にある古めかしさ、誇張などを、ただ手法上の不十分さという風に切りはなして問題にしただけでは、まだ解決されないものを感じる。また、作者自身が、賢く第三者の評言をうけいれて、そのマイナスの意味をもつ特徴は自分が育って今も住んでいる東北地方の陰鬱な風土の影響であろうと自省しているところに、この問題を真に文学上発展させるモメントの全部があるとも考えられない。
なぜなら、この作家の作品にめだつ誇張は、思わず知らず作者の若さが溢れ出したという種類のものでもないし、荒削りな北方の自然にかこまれた田舎の人の重いきつさ[#「きつさ」に傍点]というものでもない。ずっと計画性のひそんだものとして私どもにはうつる。作者が、制作にあたって意識をある方向に強調することから誇張が生じていると思われ、そこに何かいい意味にもわるい意味にも自然でないものが直感される。そのギャップを、強引にこのごろまたはやり出してい
前へ
次へ
全35ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング