一つの感想
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)所謂《いわゆる》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)とったり[#「とったり」に傍点]がいる芝居の伝統と、
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大体私は芝居の方へは御無沙汰がちで、素人としても大素人の方ですが、先だって久しぶりに「群盗」と「昆虫記」を観て、非常にいろいろ感銘を受けました。たくさんの疑問を感じました。前後して、『テアトロ』一月号の「演技批評への不満を訊く」座談会の記事を読んで、これからもうけるものがありました。
この座談会では、俳優の側から見て今日の演劇批評が与えるものを持っていないということが主として言われているようです。一人の読者として、この座談会の記事から受ける印象は特別なものがありました。それは語っている人々の感情も、語られている事柄、場面の対象もある一定の枠の中のことに終始していて、今日のテムポ早い社会的現実、演劇的現実の広い外の動きと活溌に喰いあい、流動的に積極的に交渉するものが欠けているのに語っている人々にはその点が溌溂と感覚されていないことから来るある狭さの雰囲気です
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