時二十分過。ごく浅い、軽い呼吸を一分ほどすると、ハアッと溜息《ためいき》を吐いて、頭を右の方へ傾ける、そして十秒経たないうちに同じことを繰返す。
一度一度と溜息のあとの呼吸が弱って来る。
そして、私の掌の時計が十二時二十三分過を指した瞬間彼はハアッと最後の溜息をついた。
そしてちょうど遊び疲れた幼子が、深い眠りに入ったように、非常に無邪気に頭をコクリと右へ傾けた。
昔、お姫様とお馬ごっこをして、決して離れずに遊び暮した「わたしども」の一人は彼の十五年の生涯を終った。
底本:「宮本百合子全集 第一巻」新日本出版社
1979(昭和54)年4月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第一巻」河出書房
1951(昭和26)年6月発行
入力:柴田卓治
校正:原田頌子
2002年1月2日公開
2003年7月5日修正
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