同十五分前。呼吸復旧。不安な焦躁《しょうそう》の表情去り、ガッカリした、疲れた、途方に暮れたような表情になる。母が眼を瞑《つぶ》らせようとするけれど、母の方ばかり見て決してつぶらぬ。黒、紫の混ったつめたい色、顔中にサアッと走る。
このとき、自分はフト彼の爪を見るために、手を見た。すると、紫がかった冷たい手の中指に出来ている、大きな胼胝《たこ》に注意を引かれた。いつか彼が、汽車を作ろうとして、毎日毎日鉄やブリキをいじっているうちに出来たのである。それを見ると、自分の目前には、鴨居につかえそうな体で、ニコニコしながら、ほんとうに何ともいえないよい微笑を漂《たた》えながら、腕一杯に機械の道具を抱えて、ノシリノシリと歩いて行く彼の様子が足音さえ聞えて、はっきりと浮び上って来た。
私を帯で吊り下げて、平気で歩きまわる赭《あか》ら顔の彼が、制服の上着だけ脱いだまま、ゆっさりとたくさんの物を抱えながら、汚れた帽子の下からニコニコと、とけそうにいつもの八重歯を出して嬉しそうに笑いかけるのを見ると、急に眠っていた追想の数々が目覚まされて、思わず太い呻《うめ》きを立てたほど胸が苦しくなった。
英国の
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