とに紡ぎ、織り、染め、そして縫って来たのだろう。今日こそ私たちは、はっきり自分に向ってこのことを質ねるべきだと思う。何故なら、今日の発達した資本主義の国の生産の中でも紡織、裁縫の中で最も苦労しなければならないのは、婦人たちであるのだから。紡織は、イギリスで蒸気の力で紡績機械を運転することを発見して産業革命があって後、繊維産業というものが世界中ですっかり変ってしまった。
今日の紡績工場は耳が聾になるほどうるさい。何千という錘《つむ》が絶え間なく廻っている。そこに十四五から、七八くらいの娘さんが一人か二人で働いている。平均一日五里以上を歩く。そこに働いている若い少女労働者は、殆んどみんな国民学校を出ただけの娘さんである。紡績業は明治の初め日本の資本主義発展の基礎になって、少女の安い労働でもって作った紡績生産量を、世界市場へ最も安く売り出し、イギリスのように紡績業が発達していると同時に一般の社会生活が進んでいて労働賃金の高いところの生産品と競争した。近代日本の資本主義は実に少女労働者の血と汗との上に立てられた。
明治維新は本当のブルジョア革命でなく、昔の殿様である封建領主、下級武士たちの
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