隷がした。主に女奴隷が主人たちの必要のために糸を紡ぎ織りして、主人たちは直接そういうことをしなくてもよい生活を送った。そういう社会構成の上にギリシアの自由都市は築かれていた。アナキネの物語は、ギリシアの社会に、婦人の本当の自由がなかったこととともに、女に課せられている紡織仕事に対し疑いをもっていたことがうかがわれる。
ジュノーとアナキネの関係が織り紡ぐ仕事における奴隷と主人との関係、義務を与えるものと、義務づけられたものとの関係を語っている。これを一つの例としてみてもすべての神話はその神話のつくられた時代の実生活とその社会的な根拠から湧き出ているということがわかる。ヨーロッパの封建時代、中世にはいろいろな騎士物語がある。騎士物語が近代小説の濫觴《らんしょう》となっているのだが、なかで有名なランスロットを主人公とした長い物語がある。その中に美しい孤独のシャロットの姫君が登場する。テニスンが物語っているとおり古い城の塔の中に孤独な生活をしているシャロットの姫はというとその古い蔦のからんだ塔の中で一面の大きな鏡の前で機を織って暮している。もしシャロットの姫を愛し、その孤独から救ってくれる騎
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