れることは、うるさくて堪え難かろう。どんな息子にしろ、格別の感情を抱いてもいない妹の友達たち一人一人をやがての嫁選びのような目で自分にひきつけて眺められることには我慢しきれない神経をもっていると思う。家庭というもののうちにあるそういう煩わしい、幾分悲しく腹立たしい過敏な視線が、若い世代を外へとはじき出していることを、父母たちはどの程度に洞察しているだろうか。
 社会の歩みは日本の今日の若い世代を片脚だけ鎖の切れたプロメシゥスのような存在にしているから、両性の友情の条件も実に波瀾重畳の趣である。男と女とのつき合いはまだまだ特殊な目で見られているのだから、どうしても、一方には責任を負わないことをそのたのしさとして求めている両性の遊びがあり、まともな結婚の対象ということになると、それらの友達の間からではなく、もっと保守な面から選ばれるという奇妙な現象が近来増して来ているように思える。特に男の側からその態度がつよくなって来ていると見えるのは今日の世相のどういう反映というべきだろう。つまり友達としては向上心もあり、感受性も活溌で、幾らかはスポーティな、いってみれば手ごたえの鮮やかな女性を好む若い
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