達の間では自分を親の家の空気の重さからはぬけた者として感じていたい心をもっている。男の子は自分たちだけ、女の子も自分たちだけ。その点では兄も妹も別々で、まともな心持の若いものはかえって兄と妹とのグループをごっちゃにして外で遊ぶというようなことはしないらしい。
 従って何か特別な社会環境にいる人でない限り、互の接触はたいへん稀れなことになり、友情という広汎な感情で訓練される間もなく、本質的には偶然なきっかけが特定な人への特定な感情へと導かれる場合が多くなってしまうのである。

          二

 日本の家庭の父や母たちは、永年にわたる家庭の友として異性の友人たちをもって、互の家庭の純潔をまっとうしながら友愛をみのらせて来たという経験には何と乏しく貧しいことだろう。その貧しさ乏しさは、若い世代の男の子女の子のつき合いについての判断についても良識を欠くことになってたとえば相当な年になった息子たちや娘たちは自分たちの交友を家の外でするという結果をも導き出していると思う。
 どんな若いひとたちにしろ、ただ友達の兄さん弟というだけのつき合いを一々母たちの詮索風な、また婿選び的鑑識の対象にさ
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