或日
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)紐育《ニューヨーク》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)※[#「足+宛」、第3水準1−92−36]き
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奇妙な夢を見た。女学校の裁縫の教室と思われる広い部屋で、自分は多勢の友達と一緒にがやがやし乍ら、何か縫って居る。先生は、実際の女学校生活の間、所謂虫がすかなかったのだろう、何かとなく神経的に自分に辛く当った音楽の先生である。自分の縫ったものについて頻りに小言を云われる。夢の中にあり乍ら、私は、十七の生徒で真個に意地悪を云われた時と同様の苦しい胸の迫る心持になった。すると、突然、今まで居るとも思えなかった一人の友達が、多勢の中から突立ち、どうしたことか、まるでまる真赤な洋服を着て、非常に露骨な強い言葉でその先生の不公平を罵倒し始めた。始めのうちは、条理が立って居たのが次第に怪しくなって、仕舞いには、何を云おうとするのか、文句が断れぎれで、訳のわからないことを口走るようになった。
赤い洋服を着た小さい人は、気が違って仕舞ったのだ。
場面は病院のような処となり、学校の二
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