つくしい人ハナ、……
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この間精女はうつむいて足の先で小さな花をつっついて居る。
第三の精霊は木のかげに居るまんまで手でかおを押えて居る。
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第一の精霊 ソレ、その様に自然に咲きほこって居る花を足の先でじゃらして何も忘れて居るのがお主にはよく美くしさとつりあって居るのじゃナ。今の一日はそうして気ままに歌をうとうて舞をまうて居なされ、声の美くしい駒鳥も姿のよい紅雀もつれて来てお相手さしょう。
第二の精霊 そうして居なされ。お主にそうして居られると私共は涙のこぼれるほど安心なおだやかな心持になれるのじゃ。美くしい花をもつ人はたれかがぬすみに来はせなんだかと思いわずらうと同じに私共はなやむのじゃ。
精女(涙ぐみながらいかにもこまったらしく小さなこえで)お主さまが御まちかねでございます。
第一の精霊 御待ちかね? ダイアナ殿は山羊の乳をまってござるのじゃ、私共はまっとそれより貴いものをダイアナ殿よりまちかねて居るのじゃ。
まちかねて気の狂いそうなものさえある!
第二の精霊 お主の心の花の咲くのをまちか
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