ベリンスキーの眼力
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)剔抉《てっけつ》
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「『マクベス』はシェークスピアの最も大きな、そしてそれと共に最も怪奇な作品の一つである。この作では一方からは彼の創造的天才の巨大な力が全部反映し、他方からは彼が生活している世紀の野蛮さの全部が反映している」
「シェークスピアは世界が有したかぎりの、詩の領域に於けるすべての天才のうち最大のものであるかもしれない。しかし同等に彼は自分の時代の、自分の世紀の子であった。人間の理性が千年の夢からやっと目醒めかけたばかりの、ヨーロッパでは数千人の魔法使を焼き殺したところの、そして誰でも人間と魔の力との直接的関係の可能性を疑うものはなかったところの、そういう野蛮な世紀の子である」
「彼が自分のドラマの中に導入した凡ての荒唐無稽さにも拘らず『マクベス』はそれでも中世紀のゴシック風の寺院の如く巨大なる、絶大なる作品である」「人類の全世界史的発達の各々の瞬間は、同様に豊富なる収穫を詩のために与えるものだということの証拠である。今後二世紀が過て、或はそれより少い年月でもよいかもしれない
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