が、吾々が今十六世紀の野蛮性に驚くように、人が十九世紀の野蛮性に驚くであろう時には、人は十九世紀に於てシェークスピアを発見しないが、しかしバイロンやジョルジュ・サンドを発見するだろう。そして、これは人類がその中で出口なしに廻転しているところの円周ではなくて、そこでは各々の後から来る円周が先行する円周よりも広汎であるところの螺旋である。吾々の世紀は十六世紀に対して、後から来る諸世紀がどういう点において十九世紀の野蛮性を見るべきであるかを予め知っているという重要な優越点を持っている」
文芸評論家としてのベリンスキーの生々とした精神の精髄がここに現れている。ベリンスキーという人の存在が人類の発展にどういう歴史的な価値をもたらしたかということを理解する鍵がここにかくされている。そして、これらの明らかな理性と人間社会の未来への見とおしをもって語られている。言葉は、現世紀の読者に、おそらくは筆者の予想しなかったような複雑で具体的な展望を与える。何故ならば、現世紀の二十世紀野蛮さは、野蛮であることによって利益を蒙ることのない地球上の夥しい多数人民の心を深く傷ましめている。今世紀の野蛮性を、その社会
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