実際、娘たちは編下げの髪を編みながら涙をこぼしてそういう唄をうたった。父親同士が勝手に結納として家畜だの道具だのをやりとりしてしまえば、当の娘は否も応もない。まだ見たこともない男の妻となり、その一家に新しく加った一人の無償労働者として耕地を這ずりまわらなければならなかった。
「十月」はロシアのあらゆる場所でいためつけられていた勤労婦人を実質的に解放した。労働者農民・働く全人民の解放のためのたたかいを支持し、その困難な建設時代を貫いて男と等しく生産にたずさわり、男と等しく戦線に立ち、ソヴェトの勤労婦人は解放された女の真価というものを、自分とひと[#「ひと」に傍点]とに向って確めた。
 ソヴェト権力とともに、文化の光はシベリアの奥へまで射しはじめた。一つの村に赤旗が翻ると、もうそこには、村のクラブと文盲撲滅の学校が出来た。そこで機械がまわり、男女の労働者が働いている工場なら生産管理の工場委員会が男女労働者とその指導者によって組織されると同時に、文化部の活動がはじまった。
「十月」以後、ソヴェト同盟では勤労大衆がみんな自分の年齢を忘れた。年を忘れて、社会主義社会の建設に熱中しはじめた。
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