に赤い広場に飾られた大群像、または示威運動の張りものみたいな非写実的な、応用美術の方が手に入ってる。日本で労働運動はそのような祝祭の張りものを求める状態にはまだなっていない。その代り、こういう小さい、しかし現実的な大いに語るところのある彫刻がつくられているのだ。
日本のプロレタリア芸術運動は、文学にしろ美術にしろ共通の困難を経験しつつある。階級闘争の激化につれて実際運動は益々縦へ縦へと細く鋭く鑿入しつつある。その前衛プロレタリアート大衆の階級的意志、実践を生のまま把握し、それを集団性ゆたかな芸術活動にうつし、プロレタリア芸術の確立に進むことは、決して楽な仕事でない。まだ多くの清算すべき分子と技術上の未熟練がある。だが、今年プロ美術展を見た人々よ! 来年を注目しろプロレタリアート解放運動における一歩の進展はきっと諸君の若い画かきをもまた一歩進めずにはいないのだ。[#地から1字上げ]〔一九三〇年十二月〕
底本:「宮本百合子全集 第三十巻」新日本出版社
1986(昭和61)年3月20日初版発行
初出:「東京日日新聞」
1930(昭和5)年12月3、4、5日号
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2007年8月14日作成
青空文庫作成ファイル:
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