ブルジョア作家のファッショ化に就て
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)炬火《たいまつ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)文壇は壇ごと[#「ごと」に傍点]ジャーナリズムの中へ引越して
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          一

 正月の『中央公論』は、唯一篇も正しい立場に立つプロレタリア作家の小説を載せなかった。『中央公論』以外のブルジョア・ジャーナリズムも多くプロレタリア作家をボイコットした。然し、それだけで現実の状勢を判断することは出来ない。何故なら同じ正月号の『プロレタリア文学』(日本プロレタリア作家同盟機関誌)が店頭に出ると間もなく六千部か七千部を売り切った。
 これは『中央公論』が、たった一つのプロレタリア作家の小説もない新年号を敢て出したという事実に対して、階級的文化というものはどういうものか、対立はどんな比重にあるかということをハッキリ示した意味深い事実だ。
 それから文壇ファッシズムの擡頭ということをいう前に何故ブルジョア・ジャーナリズムというものに就いて、その御用振りを書いたかと云えば、中村武羅夫でもそこまで
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