される実体があることの証拠です。極東裁判によって天皇が戦争に責任ないということを決められました。これにはずいぶんみんなが驚きました。そして反語的にいえば悲しみました。それほど一人の人間として、男として無能力者が日本の絶対者としての天皇だったということは、日本中に強烈な印象を与えています。世界がもし、日本の天皇を本当の元首とよぶにふさわしい人格をもった大人であると認めたなら、法律上の責任はともかく、人道上の責任について糺弾しなかったことはありません。そのひと個人の上に悲劇をもとめる心持はないけれども、人民に対して一軍人ほどの責任さえも負うにたえない人物であったということが証明されたことは、天皇制そのものがどんな形においても民主的日本には、もう必要がないことを明らかにしたことです。
 天皇が戦争責任を負うにたえない人物であることが証明され、彼の一族である皇族が生活の経済的基盤を闇屋に負っている実情と、ファシストやテロリストであった者が、「建設期に入ったから」と、それなりの「建設活動」を進行させている事実とを眺めわたしたとき、人民の権利というものについて無量の思いがあります。ファシズムに反対
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