人の間には、新聞口調でいえば、灼熱のロマンスがひめられていたそうです。このあやさんが賀陽氏のいとこなのだそうです。
 だいたい生活能力のあたえられずに生きてきた皇族の今日の生活は、実際ひどいものであると思います。その生活能力のないという現実と、同時に日本の人びとの感情のなかにまだまぼろしをのこしている「宮様」のありがたさに対する利用価値とが、からみあって、いつも右翼の財力にひっかかっています。いつか平民になった皇族たちの職業しらべがでていましたが、ほとんど大部分が「何々の宮」という看板を貸して、かげの闇めいた儲けでやしなわれている状態でした。
 天皇制についての研究は、この際あらためて、わたしたちの重大な問題です。なぜなら、いまの憲法は、本極りのものではなくて、このごろ対日理事会で再審査されはじめています。日本の政府は狡猾で、新憲法発布のおまつりさわぎをしたりして、さも、いまの憲法がもうきまってしまったようにみせかけました。
 ところが、そうでないことは、おまつりの最中にだってわかっていたのです。天皇がたとえ言葉の上で「シムボル」だといわれたにしろ、シムボルというものはそれによって象徴
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