するというような言葉の上での決議や、戦争挑発にだまされないという小さな決意ぐらいでは、古い大組織をもち、国際的な旧勢力と無関係でない人民生活の破壊力に対して、決して具体的に抵抗できるものではありません。わたしたちは、あらゆる場所で、あらゆる場面で千差万別の形であらわれてくる、反人民的勢力のすべてと戦ってゆかなければならないと信じます。なんぞというと、このごろは恋愛談議がはやっているけれども、恋愛にだってまっさきに問題になるのはこの反人民的な勢力が、恋愛や結婚の上にどうあらわれるかということについての現実的な判断が必要なのです。この山岸敬明をみてごらんなさい。あや夫人は、けっしてただ賀陽のいとこで、おじさんにどこか似た京都風な顔をしているばかりではありません。テロリストであった山岸宏との間に、事件当時から灼熱のロマンスがあったのです。十三年に結婚してのち、山岸はふたたび不敬罪にとわれ、入獄している。そのあいだ、彼女は彼の支持者でした。こういう恋愛と結婚とに思想と感情の一致がないということはありません。山岸宏の姉妹の一人は、中国への侵略戦争の当時、男装して軍と行動をともにして一冊の本をかき
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