れ! ほれ! これが、お前らの新文化だ!
――黙りな。
イリンカが、鋭い風のようにピムキンの顔へ向っていった。
――私は失敗した。けど、この手でやって見たんだよ。やって見たんだ。お前さんは何をやって見たね?
青年共産主義同盟員《コムソモーレツ》ニキータは、ほくろのある円くて暖かいイリンカのむき出した腕をとって、つよく横へひっぱった。ピムキンが、ルバーシカの裏ポケットから紙を出しかけたら、一時間はのがれられないのをニキータは知っている。
赤旗が十字架のかわりに教会の屋根にたてられた。その秋ビリンスキー村の革命記念祭デモンストレーションは、このクラブの前からはじまった。「文盲打破《リクベス》」の夜学と農村青年教育の夜学がそこで開かれるようになった。
ペーチャは「文盲打破《リクベス》」でニキータの助手だ。
二
ビリンスキー村のはずれに川がある。夏になると、草の茂った土手のこっち側では村の女たちが、ちょっと上流のあっち側では村の男たちが、水浴をやる。
白夜でロシアの月は白く、草は青い。裸の人間の体は美しく見えた。
土手へ出るまでの草のなかを、犬がふみつけた
前へ
次へ
全39ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング