群集にかこまれ見っともない顔をまげて、考え、つづけた。
 ――俺やくざもんだ。誰も俺のこたあまともにいわね。……だが……俺、枕なしでええ。俺枕なしでおっちぬだ。ちっこいもんにさせるべえ。ちっこいもんはここでよく育って俺のトラクターとソヴェトの守手にならにゃなんねえ。こかあ、ビリンスキー村のどこよりきれえなとこなんだ。俺そう思う。誰がここさ酒くらって来たことがある! 誰が酒くらって托児所さ来たことがある※[#感嘆符疑問符、1−8−78]
 無言の動揺が群集の間に流れた。誰かが低い真面目な声で呟いた。
 ――そりゃ全くだ。
 ――ぷう! 医者! 医者!
 ピムキンは、はぐき出してげんこをふりながら、皺の間へ涙こぼした。
 ――見ろ! 医者が托児所さ酒くらって来っことどこにあっぺえ※[#感嘆符疑問符、1−8−78]
 イグナート・イグナートウィッチが、わきへよって煙草まいてる医者に近づいてしずかにいった。
 ――今日はお前さに帰って貰うべ。
 カンカン日の照る道ばたに、医者ののって来た二輪馬車がおいてある。ビリンスキー村のもんは、ひろく道をあけて医者とイグナート・イグナートウィッチとを通した
前へ 次へ
全39ページ中37ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング