われわれん村じゃ医者の数あごく少ねんだ。ブローホフ村からやっと来て貰ってる、お前その医者殴って、あとどうしるんだ? もう来ちゃくれめえ。ビリンスキー集団農場と托児所からお前、医者奪った。元パルチザンのすっことか?
――イグナート・イグナートウィッチ! 嗅《けえ》でくれ! 嗅でくれ! 医者の口を嗅でくれ!
ピムキンはギラギラした眼と手でイグナトをせき立てた。
――どして。
――嗅でくれ!
麻ルバーシカを緑色の絹紐でしめた、丸まっちい体つきの医者は、イグナートに向って自分から、
――どうもはや、村の連中にゃかなわん。
そういって手を振りながら、また地面につばをはいた。そのはずみに医者はひょろついた。イグナートは、じっとその様子を見つめた。
――さて……
髯をしごき、今は密集している集団農場一同に向っていった。
――同志《タワーリシチ》、集団農場員《コルホーズニキ》! どうすべえ? 医者は酔って托児所さやって来た。
――聞いてくろ! 俺《おら》、どげえな思いしてこの托児所こせえた? 一年かかって、てんでが家から、枕あ、敷布だしあって、やっとこせえたんだ。
ピムキンは、
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