いう室を、見物するのに二時間かかった。
 天気がいい日は素敵だ。托児所の外庭の菩提樹のかげに、いろんな形の籠や小寝台がならぶ。臍《へそ》まで出して嬉しそうにその上で足をバタバタやってるちびどもの間を、白い上被《うわっぱり》きて白い布《プラトーク》かぶったニーナとマルーシャが、ただ見るよりずっと悧巧そうな顔つきで、笑ったり、しゃべったりしながら動いている。
 ――へ、托児所じゃ、時間きって昼寝さすんだとよう。
 乾草をサスでかえしながら、ビリンスキー集団農場で女たちが話した。
 ――ふ、ふ、ふ。こっぱずかしいみてえにあそこあ、さっぱりしてる。
 ――まあ、は、悪いこっちゃねえわ。
 アグーシャはそのために自分が殴られた籐製の籠を、今は毎日托児所で見た。そこに寝かされるのは八本指のアリョーシャの末っ子だ。グレゴリーがいないことにアグーシャはしだいになれた。
 托児所の庭でアグーシャは馬鈴薯の皮むきをやっていた。子供を片手に抱きあげ、むつきを代えていたマルーシャが、むこうを見ながら、
 ――あら、見なアグーシャ! 今日、ピムキン、托児所見さ来るつもりだぞ。
といった。
 ――どれね?
 ――
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