ホラ! 見ろ。ルバーシカ洗って干してんべ。
 白樺が六七本かたまって生えている。わきに小流れがあって鵞鳥が浮いていた。ピムキンが黄色い半裸で、そこの草に坐っている。白樺の枝に、何色といっていいかわからないピムキンのルバーシカが古旗みたいにひっかけてあった。
 ブローホフ村の医者が来る日だった。マルーシャは、しばらく遠くに見えるピムキンの裸の背中を眺めていたが、
 ――ぷう! 気違い!
 そのまんま歌をうたいだし、せっせと子供を洗いにかかった。
 暑い日になった。アグーシャははだしで裏のりんごの樹かげへ坐り、子供らの下着のつづくり仕事を膝へひろげた。
 医者が来るんで、籠の寝台は庭から建物の中へ入れられた。匂うような暑い夏の午後を蜜蜂がプウーン、プウーンうなってる。
 アグーシャは、そうぞうしい人声にハッとして眼をひらき、あたりを見まわした。裏庭には彼女ひとりだ。騒動は托児所の表だ。
 ――えーふー、あにおっぱじめた……。
 建物の横をまわって入口へ出ると、びっくりして突立ってるニーナがいる。白ズボンをはいたブローホフ村の医者が頬ぺた押えて、地面につばき吐いている。そしてピムキンが五六人
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