こう、ここで! ここあ俺の集団農場だ。心配すんな! あ?
 ――見ろ! あに心配すっことあるか。
 マルーシャがアグーシャの胴を抱えてひったてながらいった。
 ――さ、内さ入ってちっと休め、な。
 アグーシャがやっと立って内へ入りかけると、たかっていた集団農場員たちはガヤガヤてんでの間でしゃべり出した。ペーチャは、
 ――見ろ! ソヴェトの息子と女房のすっことう! 俺異分子に用はね。結構だ! ガラスキーの麦で養え。
 そういうピムキンの声と、
 ――他人の不仕合わせ見てほたえるでねえ、ピムキン!
 ワーシカの声とを聞いた。
 アグーシャは、二日、ぼんやりして家の中で横んなっていた。それから集団農場の事務所へ出かけて行って、托児所の台所で働くようになった。
 真白に塗った羽目がある。窓枠には、桃色の花がいっぱい咲いた西洋葵の鉢がのっかってて、二つの室の綺麗な床に遊んでいる子供らは、年の順にわけられている。
 小さい手拭がズラリと低いところに下ってる。その上に、花、鳥、馬、家、目じるしの画がはってある。歯ブラシとコップがある。托児所開きの日、ビリンスキー村の大人と子供とは、たった二つのそう
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