父、集団農場出る気かもしんね。
しばらく歩いて、ペーチャがおもおもしくいった。
――ふーん。そんなこといったか?
――俺にゃ、何にもいわね。そう口きかねんだ。
――アグーシャ、どうする、そうなったら――第一、ペーチャお前どうする?
ペーチャは、だまって春の夜道んなかを真直ぐに細い少年の体つきで歩いて行った。
五
托児所にするブガーノフの小舎の羽目を二度目に塗りに行ったら、弱虫のリョーリャが、
――俺、やんだ! もう塗らね。
鉢のひらいた頭をふった。
――あしてよう?
――ルバーシカよごしたって、お母がしばくから、俺やんだ。
ペーチャが、
――だら、ルバーシカ脱げ!
と先頭にたって、ぐるぐる自分の背中から海老茶色のルバーシカをむいた。順ぐり、リョーリャもとうとうぬいで塗った。
ペンキ塗りは明日ですむ。ペーチャにはまだ仕事がある。子供の組をわけて、※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66、262−19]や馬やひまわりや猫や、そういう絵を、十九枚書かなくちゃならない。托児所にそういう絵がいるんだ。
ペーチャは脱いだルバーシカを腕へかけたまんま近
前へ
次へ
全39ページ中25ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング