いる間に、再びイグナートのしわがれた声が響いた。
――以上の件で托児所設立に反対なもの手をあげ!
腕組したまんまだ、グレゴリーは。
――では、絶対多数で、托児所の問題は可決された。これもボルシェビキ的テンポでやっつけべ。
――イグナート・イグナートウィッチ! 枕や敷布、どこさ持ってくかね? 真直ぐブガーノフの小舎さか?
――いや、衛生委員の室さ一応あつめるべ。
街燈のない村道にぞろぞろ人通りがはじまった。亭主のわきについて、足早に小舎へ帰って来るとアグーシャは、頭にかぶってた毛糸肩掛けをときながら、
――見っともねえ!
いつにない荒っぽい口調でいった。
――お前だって、集団農場さ加ってる身でねえか! なして、手あげなかったよう。
グレゴリーは、靴ぬいで、足をまいてる麻布の工合をなおしながら答えた。
――何の必要がある? 俺に、ペーチャは十三だ。
――そんだこといったら、イグナート・イグナートウィッチはまるっこのはあ、ひとりもんだ。……俺らとこだって……ちっこい者が出来ねえもんでもなかっぺ。――
――面白くもねえ! 牛だせ。馬だせ。鋤だせ。あげくの果あ、――枕だ
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