―静かにしろ!
と聴衆の中から叫んだ。が、赤い布をかけた細長いテーブルの前に立っていたイグナート・イグナートウィッチは、首のガクつく鈴をチチリ、チチリ、チチリ、と鳴らし、
――同志《タワーリシチ》、集団農場員《コルホーズニキ》! そうだ。正しい。われわれのところで、この春の播種面積は予定地積の九十二パーセント二分あった。
ほほえみながらつけ加えた。
――どうか来年は、俺がもっと大きい数字を忘れるような成績でやっつけたいもんでねえか!
みんな悦んで、笑いながら拍手した。
ビリンスキー村の集団農場は、二度目の蒔つけを無事に終ったところであった。ペーチャがニキータとトラクターの番をして、乾草の上で夜明しをしたのは、もうまる一年前である。
この夜の大会は、去年の秋から提出されていた集団農場托児所設立問題をいよいよ実行案として討議した。
数時間、めいめい遠慮なくしゃべった。それから、委員が起立して読みあげた。
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一、托児所は、村から追放された富農ブガーノフの小舎におくこと。
一、集団農場と村ソヴェト衛生委員会との協力によって毎月二十ルーブリ
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