。
ここに、ピムキンは何の用がある?
ペーチャは、さては、と思った。おっかない、勇ましい気がし、急に焚火のそとの暗がりが濃く深く空の星が遠く感じられた。
ニキータ、ワーシカ、ニーナなんかがトラクターとピムキンとを見張ってるのだということが、ペーチャにわかった。ピムキンは人並な奴じゃない。村のものを何ぞというと土百姓《ムジーク》といいやがる。ピムキンはいつでも意地わるだ。――トラクターをこわして集団農場を妨害する奴の話はペーチャだって一度や二度でなく聞いているのだ。
焚火の、ぼんやりした赤黄ろい光りの中に、幅広い波形歯のついたトラクターの大きい車輪の一部が浮いて見える。ピムキンのボロ長靴の先が見える。
よっぽどたった。
ふいとピムキンが立ち上って、暗がりに消えた。ニキータが、いそいで、反対の側からトラクターの方へ行った。
間もなくピムキンが焚火のそばへ戻って来た。ニキータが口笛をふきながら、かえって来た。
ピムキンはもう寝ず、ブリキ薬罐を焚火のそばへ押し出し、片手の腸詰をかじっては黒パンをくいはじめた。
ペーチャや若いものは、黙ってそれを焚火のこちら側から見ている。ピム
前へ
次へ
全39ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング