敵にわたすか? 渡さねえ。同じことだ。機械を富農《クラーク》やその手先に渡しちゃならねえ。わかったか※[#感嘆符二つ、1−8−75]
わかった! わかっている! いくつもの声がニキータの演説に答えた。
夜になると、トラクターの置いてある村ソヴェトの下の広っぱに焚火がたかれた。ビリンスキー村のどの家の中でも、今夜は、この広っぱに時々気をとられる。
ペーチャは粥《カーシャ》を食ってしまうと、ムッツリしている親父をおいてぶらりと外へ出た。広っぱの低い焚火のまわりに、五六人集まっていた。ニキータ。ニーナ。ワーシカがいる。ワーシカもニキータと同じ青年共産主義同盟員《コムソモーレツ》で村の牧童だ。しかめ面して鞭の柄で焚火を突ついている。だが何故みんな変に黙りこんで――つまり変にしてるんだろう? ペーチャは焚火のあっち側をすかして見た。我知らず、ニキータの顔を見上げた。ニキータは知らんふりしている。ピムキンがいるじゃないか!
明るい火のそばへボロ長靴をはいた足を出し、どっからか乾草をひっぱって来て、その上へころがっている。腸詰、黒パン、ブリキのひどい薬罐《やかん》などがピムキンの足許にあった
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